『愛を読むひと』
~やっぱり「あなたなら何をしましたか?」なんですよ~
※ネタバレ&長文注意。映画に興味ない方は読み飛ばしてねん♪
1995年に出版され、世界的なベストセラーとなったドイツの小説『朗読者』の映画化です。
少年マイケル(原作ではドイツ語名でミヒャエル)は、15歳の夏、21歳年上のハンナと出会い恋をする。ハンナの家で本を読み聞かせ、風呂に入り、関係を持つ。そんな日々が続いたある日、突然ハンナは姿を消す。そして8年後、法科の学生となったマイケルが傍聴に行った元ナチス親衛隊の罪を暴く裁判で、被告席に座ったハンナと再会することに・・・。
近ごろ「原作を読んだ方が・・・」「TV版がお薦め」という感想を書くことが続いてましたが、この作品の映画化は素晴らしいです。
ものすごく行間を読み込んで作られたというか、小説では分かり難かった登場人物(とくにハンナ)の感情が、映画を見て「あぁ・・・そうか」と感じ取れる箇所がいっぱい。原作は、少年とハンナの恋を描いた1部、裁判の過程とハンナの過去が暴かれる2部、獄中のハンナに朗読したテープを送り続ける3部、と分かれています。最初読んだときには各部少しずつトーンが異なるので若干の戸惑いを覚えたのですが、映画版ではその点が統一されていて、逆に「より小説っぽく」なった気がします。
ただ、『愛を読むひと』という邦題にちょっと違和感あり。歳の差を越えた愛、無償の愛・・・と、すんごいラブストーリーという印象でアピールしたかったのかな?という意図は分かるのですが、原作・映画含めて純粋な愛情というものは、この作品から感じ取れないんです。そもそも、愛とは違う気がする。なので、純愛物語を期待していくと肩透かしを食らうかも。
少年の幼く抗い難い欲望から始まった恋。あまりに強烈なハンナとの思い出。確実に幸せだったそれらの情景。それがハンナの罪や秘密を知ったとき、どう扱ってよいか分からない傷になってマイケルにつきまとう。
裁判を傍聴するマイケルからは、ハンナに対する愛情ではなく理解をしようと努める苦しみ、大人になって朗読テープを送り続けるマイケルからは、無償の愛というより、あまりにもハンナの存在が自分の人生や人格形成に与えた影響が大きすぎて、朗読し続けることで“解脱”でもしたいと思っているのかい?と思っちゃう、何ともいえない葛藤が感じられます。そのあたり、原作でも映画でも明確な回答を与えてくれてないところが、むしろ好感度大、です。
裁判所での尋問で、看守時代の罪を問われたハンナは、裁判官に問いかけます。「あなたなら、どうしましたか?」と。ネタバレですが、ハンナは文盲です。それをひた隠しにしてきたことで、職業選択の幅も狭められて看守になり、さらに裁判では重罪の判決を受ける原因にもなってしまいます。そんな彼女からの、真摯な、心からの問いかけです。そしてその問いは、ハンナとの関係、ハンナが文盲であったことをやはり秘密にした、マイケルにとっても生涯逃れられない呪縛となった気がします。
長くなってホント嫌なんですけど、もう1点、非常に心に残ったシーンが。服役中、ハンナは届いた朗読テープをきっかけに文字を覚える決心をし、読み書きができるようになります。釈放されることが決まった年老いたハンナとマイケルが再会する場面で、マイケルは聞きます。「収容所のことは考えた?」「刑務所で何を学んだ?」と。するとハンナ、収容所に関しては冷めた返答をする一方、「文字を覚えたわ」と誇らしげに答えるのです。非識字者について詳しくは知りませんが、読み書きができないことへのコンプレックス、屈辱感というのは、それほどに(収容所で犯した罪への罪悪感よりも?)大きなものなのか!と驚かざるを得ません。
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朗読者 (新潮文庫) 著者:ベルンハルト シュリンク |
余談ですが、ホロコーストには子どもの頃から興味があって、4年ほど前にポーランドのアウシュビッツとビルケナウの収容所跡へ行きました。その時の印象がね~。自分でも「どこか麻痺してるんじゃないか?」と思うんだけど、“美しい”場所だなーと感じたんですね~。って、おかしいっすか?
でも、素晴らしく天気の良い日で、バラックとガス室の跡が点在する広大な草地の向こうには深緑の森や湿地が続いており、小鳥のさえずりまで聞こえる。(当時はデジカメで写真をとってなかったので、アップできないのが残念です)午後のひと時、そんな中じーっと木陰に座っていると、ここで過去に想像を絶する残虐行為が行われていたなんて嘘のように思えてくる。でも、現実なんですね。そこで背筋が寒くなる。というか、ほんとうに「もし、私がその時ここに居たらどうしたか」と考える。もう何も肯定できず、何も否定できなくなります。
アウシュビッツには、観光地でもあり『シンドラーのリスト』の舞台にもなったクラクフを拠点に日帰りで行くことができます。ドイツやチェコ・プラハ方面へご旅行される予定があれば、ぜひ足を伸ばしてみてほしいところです。「そっと」そのまま存在している、そんな“負の遺産”です。
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コメント
わたしもみたなり!
すっごく良かった!映画化してくれてありがとう!と手を合わせて拝みたくなりました。
これ、わたしもレビューを書くことになったのでこの日記の真ん中あたりから詳しく読まなかったので(申し訳ない!)、また改めてコメントさせていただきます。
投稿: tommy | 2009年6月22日 (月) 09時44分
こんなじっくり脚本を練って映画化してくれたら、原作者だって両手を上げて万々歳なんじゃないでしょうか。
セリフは英語なんだけどしっかりドイツ映画の雰囲気を醸しているし、私はハンナがより人間味ある人物に肉付けされてるところが良かったです!
レビューがんばってください!アップされるの楽しみにしています
投稿: r.nitta | 2009年6月22日 (月) 20時51分